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お問い合わせフォームへ弊社が主催する「次世代連携フォーラム」開催内容より、現場の先生方のお役立ていただけるエッセンスをレポート形式でお届けします。今回は、2024年9月6日(金)の開催内容より、今求められる在宅医療現場の質と教育についてのヒントを紹介します。
在宅医療においては近年、医療提供側の人材不足や、医師あるいはクリニックに対応力のばらつきがみられることがより課題視されるようになっています。一方、医療機関と連携する看護・介護も業務の内容が均てん化されているとは言えません。さらには患者特性や社会資源も地域によって異なるなか、高齢社会の進展にともなう地域の医療基盤の確立が急務となっています。
本フォーラムは、こうした背景のもと、今、問われる「在宅医療の質」と教育について活発な議論が行われる場となりました。
安井 佑(医師・TEAM BLUE代表)
生きる喜び・人が人を想う世界を理念に掲げ、TEAM BLUEを率いる。450名ほどでやまと診療所・おうちにかえろう。病院、おうちでよかった。訪看、ごはんが食べたい。歯科の4事業を運営。
牧 賢郎(医師・一般社団法人誠創会 代表理事)
「ヒトに誠実に向き合い、コトに創造的に取り組む」と想いを込めた同法人の代表理事。2021年に渋谷区で設立したのち埼玉・千葉に展開し2024年には4施設へ急成長中したあさがおクリニック運営。
開業前は救急医として勤務していました。退院しても戻る場所がないケースを多数目の当たりにし、高齢化に加え孤独や貧困といった深刻化する社会課題に対峙する必要性を感じて法人を立ち上げました。小規模な組織ですが直近2年間で従業員は10人から40人に増え、クリニックも1機関から4機関へと拡大しました。
「24時間365日」の在宅医療を支える医師の質確保においてはキャリアパスやオンコール・当直体制、給与体系の整備が重要です。当法人では「採用・教育・評価・成長サポート」を一体的に運用することにこだわっています。毎回異なる多職種との連携体制や複数拠点のかけもち、事務所外での業務といった「見えづらさ」に対応するため1on1やデータ分析を活用しています。評価制度はスキル別に分けているほか組織サーベイやコーチングなどの新しい取り組みも取り入れ、組織の成長、ひいては地域医療の課題解決につなげていくことを目指しています。
2013年に3人でやまと診療所をはじめ、12期目に入りました。現場に合わせ病院、訪看、訪問歯科を設立し、現在450名ほどのチームになっています。組織が変化しても大事にしている理念はずっと変わらず「自宅で自分らしく最期まで」。このための人材確保は不可欠で、「人づくり」にはこだわってきました。
2年ほどかけて在宅医の教育プログラムを組み2024 年スタートさせました。背景にあるのは危機感で、今、先生がたの力を借りなければ在宅医療は回らなくなっている。そういう分岐点の時代です。
プログラムはNBMを重視する体系だった実地教育が特徴で、受講することである程度在宅医として活躍いただけるんじゃないかと思います。
今後、在宅医教育の標準化はいっそう大切になります。僕たちのプログラムのような取り組みは他でもあるので、合わせて標準的な教育ができていくことで、医療の質ももっと客観的に議論できるようになるでしょう。
唐澤:人材不足の在宅医療における非常勤医の重要性は年々高まっています。それに伴い診療の質の確保や患者との信頼関係・職種連携などの課題が挙げられるようになりました。翻って医療機関や連携施設においても提供するサービス内容が均質・同一とは言えず、地域特性なども検討が必要な状況です。本セッションでは、こうした現状のもと、働き方改革なども踏まえ医師および非常勤医の役割、地域全体の観点から見た教育の必要性について議論し、今後の在宅医療の質をいかに向上させるか、皆様と一緒に考えていければと思います。
唐澤:在宅医療の質におけるチームマネジメントについてお伺いします。例えば雇用形態ひとつとっても、非常勤・常勤でコミットの差も出てきます。こうしたチーム運営していくうえでの課題や工夫を教えていただけたらと思います。
安井:僕たちは「あたたかい死」というキーワードでビジョンを共有しています。残り3カ月どう生きるかといった時、多くの場合「どうせ死ぬ。何の意味がある」と思われる瞬間が訪れます。その次に続くのは「周囲の世界はその後も続く」という気づきです。自分がいなくなっても家族や友人は生き続けると思い至ると、思い出や感謝が起こり、ご本人と周りに思いが伝わりあうことになります。頑固なじいちゃんがずっと面倒を見てきたばあちゃんに「ありがとう」と伝える。お前といれて幸せだったと一言言ったりする。ばあちゃんはその一言と一緒にあと20年生きたりするわけです。間違いなく訪れる多死社会で、一つひとつの死が仮にあたたかいものだったとしたら、そういう街になります。もちろんちゃんと医療を提供する前提で、僕たちは人が人を想う社会を実現したいと考えています。
符:私自身研修医の時の経験がきっかけとなり在宅医療に携わっているのですが、この時の経験は、まさに安井先生が言語化された「あたたかい死」だったと思います。当社(株式会社on call)のサービスも多くの先生にとってこうした在宅医療のきっかけになればという思いで始め、今に至ります。
牧:僕は、法人立ち上げの当初24時間365日一人で診ていました。120人くらいになった時、やりたかった持続可能な医療じゃないと実感し、社内体制を整え様々なサービスと仕組みを作るなかON CALLさんとご一緒しはじめました。最初は院内でコールを受ける体制からスタートし、対応範囲も質も分かってきたので現在はファーストコールからお願いしています。申し送りもカルテも見れる環境で少しでも迷ったら連絡していただく形をとっており、チームとして機能していると思います。質にこだわりたい局面はどうしても生じますが、誰がしても避けられない事例で発生頻度はそこまで多くありません。同じクオリティを自分たちで0から作れるか検討もしましたが、求められているスピード感などとズレもあり大変だという結論になりました。(ON CALLの)先生方は本当によくやってくださり、カルテを遡ってストーリー見てちゃんと看取りをして、即断即決で現場に行ってくださっています。
符:チームで言えば、ON CALLのサービスは夜間休日のスポットという「連携する多職種の一人」といった位置付けかもしれません。スポットでしかも夜間休日に外注の医師が対応するのは、ある意味一番難しいのですが、一方で持続可能性の観点などから、夜間は現状切り離さないといけないといった需要もあると思っています。当社はいろいろな地域で医療機関とご一緒しフィードバックをいただいていますが、同じ対応でも内容は違います。この時はまず第一に患者さんを主語にすることが必要で、「我々が」ではなく患者さんがどうだったかを常に話したいと思っています。
唐澤:弊社も若手の育成・教育は取り組んでいるところです。安井先生の医師教育は「文系的」なプログラムと伺っています。
安井:NBMの教育とか、みんなで考える力をつけると言ったりもしています。在宅医療において避けられない、どう生きてどんな最期がいいかといった答えはご本人の中にしかありません。我々が入らせていただく以上は、その問いを大事にする存在となります。在宅医療では話し合いながら患者さんご自身が答えを見つける力、つまりみんなで考える力が必須です。在宅医の質はここが課題で、医師は「みんなで考える力」を持っているから医師になるわけではない。ちゃんとやれば恐らくこの教育はできると思います。
唐澤:牧先生は実際外注を活用される中、サービスによる違いや難しさを経験されているのではないかと思います。
牧:評価や教育内容がサービス側で全開示されているわけでもありません。違いはありますが、当たりはずれは「たまたま」の感覚が近いのかなと思っています。逆に僕たちが求めるスキルも含め、ともに教育を担ってもらえると本当にいいなと思います。外来では元気だけど診察室以外ではよれよれで家はゴミ屋敷といった事例はたくさんあります。そういう外来だけでは見えないことが見え、在宅の現状や可能性を知るだけでも大事です。フィードバックもその一環になるといいなと思って評価を出しています。
符:当社としては、訪問診療に初めて入る若手医師を大切にしたいという考えがあり、診療前にそもそも在宅医療とは何かまず知っていただく取り組みをしています。診療に入ってからはインターフェースやITシステムなども活用したフィードバックを教育の一環と位置付けています。その中でがっつりやりたい先生も生まれるかもしれません。このような在宅医療に携わる入り口となる場がON CALLになればと思っています。また、今後いっそう地域差を埋めたり、コミュニケーションやこだわりを共有するハブ的な役割を担っていきたいと思います。
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