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お問い合わせフォームへ− まず、中溝さんご自身の在宅医療の体験についてお伺いしたいです。ご家族が在宅医療を受けることになった経緯を教えていただけますか?
中溝:
はい、私の妻が在宅医療を受けてました。在宅医療の体験者となる2年前、妻が大腸がんステージⅣと診断され、抗がん剤を中心とした積極的治療を受けていました。
その時期はちょうど、私が弊社のサービス『ON CALL』を立ち上げた直後で、当時の私は在宅医療についてほとんど詳しくありませんでした。どちらかといえば、「高齢者が受ける医療」というイメージを持っていました。しかし、妻の病状が進行するにつれて、いずれ在宅医療を選択せざるを得ない日が来るのではないかと考え始めるようになりました。正直なところ、当時は「在宅医療を選ばずに済む未来」を願っていたのも事実です。
主治医から「在宅移行」という言葉を聞いたときには、まるで「もうそんなに長くない」という現実を突きつけられたような気持ちになりました。妻もきっと同じように受け止めていたと思います。
それでも、結果として在宅医療を選択したことは、入院治療では得られない「家族とともに穏やかな時間を過ごす」というかけがえのない価値をもたらしてくれました。この選択が、妻にとっても、子どもを含めた家族にとっても良いものだったと、今でも強く感じています。
− 在宅医療を経験されて、病院で受ける医療との違いをどのように感じましたか?
中溝:
病院の医療と在宅医療は「アプローチの仕方」に違いがあると感じます。
病院では、患者は診察室に並んで、検査をし、順番がきたら症状を聞いて、治療を受けるのが基本だと思います。一方で在宅医療では、医師が患者の家に来てくれて、まず最初に「今、何が一番つらいですか?」と声をかけてくれます。この一言が、両者の医療の本質的な違いを物語っていると感じます。在宅医療では、治療そのものだけでなく「患者や家族の状況に寄り添う姿勢」が何よりも重視されているのです。
例えば、妻がつらそうにしているとき、医師が「今日は無理して話さなくていいですよ」と提案してくれたことがありました。そして、妻が少し話せる時間帯に訪問看護の方が来られるよう、医療機関が丁寧に連携を取ってくれていました。その柔軟な対応と気遣いは、患者である妻だけでなく、支える家族である私にとっても大きな安心感を与えてくれました。
妻が在宅医療に移行したのは、約2年ほど抗がん剤治療を経て、病状が進行し、歩行が難しくなった時期でした。その後の在宅医療を通じて、家族として支え合う時間の大切や、医療者が見せる寄り添う姿勢の重要性を深く実感しました。
今でも忘れられない一言があるのですが、ある夜、妻がとても苦しがっているのを見て、深夜に往診を依頼しました。医師が到着するまでの時間、私はただそばにいて見守ることしかできませんでした。医師とアシスタントが到着し、薬を投与してくれたことで妻はようやく落ち着きました。そのとき、アシスタントの方が「ご主人、よくここまで頑張りましたね」と声をかけてくれました。
その一言が本当に心に刺さりました。それまで張り詰めていた緊張がほどけ、涙が出そうになるほど救われたのを覚えています。医師や看護師の方が医療行為を提供するだけでなく、患者や家族の感情にも寄り添ってくれる。これが、在宅医療の本質だと実感しました。
特に終末期医療では、「治すこと」ではなく、「穏やかな最期を迎えること」が目的になります。そのためには、患者本人だけでなく、家族の心にも寄り添うケアが必要で、在宅医療の現場では、それが医療者の自然なアプローチとして行われているのを感じました。
在宅医療は、患者が自宅という「最も安心できる場所」で、心穏やかに過ごせるよう支える医療です。それは「患者や家族に寄り添うこと」を大事にしている点で、病院の医療とはまた違う価値があると感じます。この経験を通じて、在宅医療の持つ温かさと意義を深く理解することができました。
− 実際にそういったご経験を通じて、「ON CALL」のサービスはどのような形にしたいと考えていますか?
中溝:
患者としての体験者であり、医療提供者でもある私が考えるのは、患者が求めるものと医療者が提供するもの、その両者のバランスを取りながら全体の最適化を図ることです。
患者を中心にした医療を追求することは、一見理想的に見えますが、それが必ずしも正しい方向とは限りません。
しかしながら、根底にある考えとしては、私たち家族が体験したように「心穏やかに過ごせる」環境を提供することが重要だと思っています。それを実現するために、昼夜を問わず、また医療機関が休日のときでも安心して頼れる医療サービスを提供できる仕組みを目指しています。
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