Q. まず最初に符代表が会社設立に至った経緯についてお聞かせ下さい。
符:
会社設立の経緯について話すには、まず「在宅医療」との出会いから話す必要があります。私は元々泌尿器科を専門にした臨床医として病院で働いている中で「在宅医療」に出会いました。
患者さんがいろんな病気を抱えながら、ある程度治療する慢性期の状態に入り、その後に治らない病気等を抱えた状態で、どのような生活を最終的には死ぬまで続けていくのかというところに向き合っている終末期の医療として、「在宅医療」を知り、魅力を感じました。
それは自分が医師を志した理由でもあり、実際に臨床をやりながら感じていた「患者さんにとってのベストとは何か」という問いと向き合うことのできるど直球な分野だと思ったんです。
当時は初期研修のプログラムで「在宅医療」を2か月研修をした程度でしたが、ずっと心に残っていました。

そのあと、コロナ禍のときに長野に2年間、泌尿器科医として急性期病院に勤める中で実際に長野の在宅医療の現場を見て、夜間休日の体制が不足していたり、主治医の先生がご高齢の先生たちだったので、もっと若い先生たちの力が在宅医療には必要だと感じていました。
そうしたご縁もあり、『ON CALL』のサービスのテストマーケティングは長野で開始しました。このテストマーケティングでは、課題も多く発見でき、いろいろと学ばせていただいた1年間でした。
その後東京に戻り、本格的にサービスをリリースし、今に至っています。
Q. 創業して4期目となり、創業時からどのように成長を感じますか?
符:
成長に関しては全てにおいて感じています。事業に関わるスタッフの数や業務内容もそうですし、事業の規模やシステム、顧客医療機関様とその先にいる患者さんの数も増えました。関わる人間の多さやシステムが向上するにつれて、自分たちが提供したいものがより良いものに改善されていっていると日々実感します。
特にシステムの開発は大きいです。元々構想していた「効率が良く、往診へ行く医師を決めて、実際に往診を行う」というフローの仕組みはシステムで実現できるようになりました。

「誰かに来て欲しい」という患者さんがいて、そのお願いに対して医師が行くというのは、言葉だけだと簡単に聞こえます。しかし、それを実現するためには、「患者さんからの電話を受ける人」や、「対応内容を記録し、内容を医師に共有する人」が必要ですし、医師だって状況を理解して、実際に患者さんのいる現場に行って往診を行い、往診後には「患者さんを診ている医療機関」に記録を残したり、フィードバックをしなければいけません。
その一つひとつの工程を、最初はマニュアルからスタートさせていましたが、WEB上で管理や情報共有のシステム化ができるようになったので、1時間かかっていたものが10分ぐらいでできるようになったりなど、システム開発により理想にどんどん近づいています。
システムの自動化と人員の配置によりクオリティを下げることなく、多くの患者さんの往診を行うことができる仕組み、体制作りを実現できるようになりましたね。
Q. 当社(株式会社on call)が掲げるミッション「すべての人が生涯好きな場所で最良の医療が提供される社会をつくる」について、符代表の想いを教えてください。
符:
ミッションの内容自体は文字通りって言い方もあれですけども、医療を受ける時代や地域、情報を知ってるか知ってないかで、現実的に受けてる医療の差はあると思います。
例えば、「ここに住んでるからこういう医療が受けられる」というのも大切ですが、当社としては、「その地域で受けられるベストな医療は、希望している人が受けられるような環境にあってほしい」と思っています。そう思う理由としては、自分自身に置き換えたときに、どうありたいかという話に尽きるかなと。
単純に自分が在宅医療を受けることを想像したときに、自分がどういう医療を受けたいか、例えば家やどこかで過ごす時にその場所に在宅医療がなくて、病院で過ごすしか選択肢がないのは良くないなと思っているからです。
自分の家族や身近な人がいずれ医療を受ける側となり、死を迎える場所を考えた時に、『ON CALL』があるからこそ、その人が在宅医療を受けたい時に受けられるような未来を、地域の先生たちとともに目指して作っていきたいです。

現在サービスを提供している中心エリアは東京や埼玉、神奈川、千葉など首都圏エリアで、そのエリアには在宅医療の先生がたくさんいますが、地方でも体制やシステムを提供できるようにしたいと考えています。
また、最良の医療という点では、提供されてる在宅医療の中でも、診てくれる医師の先生によって医療の質のばらつきがあるという課題もあります。
医療提供の質のばらつきをなくして、質の良い医療を受けることのできる世界を作りたいですね。
Q. そんな符代表自身は、最期はどこで過ごしたいですか?
符:
穏やかな場所が良いですね。
在宅医療を選ぶ基準の多くは、家族や身近な人とできるだけ接することができる環境を望むという点です。その人たちに負担がかからない環境が理想だと思います。人によっては、それが自宅かもしれませんし、自宅の近くにある老人ホームという選択肢もあるでしょう。病院ではないように思います。病院は面会制限がありますし、逆に言えば、もし病院がいつでも家族が訪れてコミュニケーションを取れるような場所であれば、それも良いかもしれません。
今の在宅療養の環境が最適かどうかはわかりませんが、私が住んでいる家も在宅療養に適した場所ではないかもしれません。どのような場所が良いかは、そのときになってみないとわからない部分もありますが、やはり自分の家族がすぐに会えることや、家族への負担が少ないことが基準になるでしょう。
私は介護の経験がないのでわかりませんが、介護の負担は想像以上に大きいと思います。それが家族にとって負担にならないのであれば一緒に過ごすのが良いでしょうし、難しければすぐに会いに来られる老人ホームなどの施設も良いかもしれません。

今ではビデオ通話などの手段もありますので、そういった環境が整っている場所であれば、家族との繋がりを身近に感じながら、在宅医療を受けることができると思います。
家族と繋がりがある環境で、いつでも会えるような場所であれば、どこでも良い気がします。
いつかそのような繋がりが続く療養場所を作りたいと考えています。『ON CALL』を通して、どの地域でも在宅医療が充実しているというのも、一つの実現方法だと思っています。
Q. 『ON CALL』が他の在宅医療サービスと異なるポイントとは?会社の体制面と人事面、システム面でそれぞれ教えていただきたいです。
符:
体制面という表現が適切かはわかりませんが、他社のサービスも目的はそれぞれ異なると思います。同じオンコール代行サービス事業でも、設立の背景や目的が違うかもしれません。目指している方向性が異なるため、体制にも違いがあるでしょう。
他社さんが最終的にどのような世界を実現させたいのか、どのような目的で事業を行っているかは、私には正確にはわかりません。しかし、少なくともサービスとしてニーズがあり、そのニーズに応える形でそれぞれがサービスを提供しているという点では同じと考えます。これが基本的な前提です。
当社の体制面でいうと、組織構成が特徴的です。当社は外部投資家が支援するスタートアップ企業であり、経営陣には多様なバックグラウンドを持つ人材が集まっています。

例えば、私は医師としての経験があり、役員の中溝はビジネス経験を積んでいます。このように、多様な専門スキルを持った人材が集まってサービスを提供していることが当社の大きな特徴だと思います。
私が実現したいビジョンに基づき、医師をどのタイミングでどこに配置するかを朝木がマッチングアルゴリズムで最適化しています。『ON CALL』のサービスを実現するため、同じ目的を共有する人材が揃っています。
サービス内容については、クリニックの代替として、特に医療提供の基準を考慮し、理想的には主治医の先生が患者さんの電話に常に対応し、相談に乗る形がベストだと考えています。
また、専門医に相談しながら、有機的に患者さんに最適な医療が提供できれば理想的です。その現実的な解決策として、私たちは主治医の先生方が休めるように医師を配置し、サポートしています。
当社のコールセンターは、医療に精通した看護師や医療職が対応することが重要だと考えています。そのため、できる限り医師の知見を取り入れたマニュアルを完備し、いつでも医師と連携できる体制を目指しています。現在、コールセンターには看護師のスタッフを集め、医師によるサポート体制も整えているところです。
Q. 資格があっても在宅医療の経験が少ない医療者の方に対して、『ON CALL』のオペレーションをしていただく上で、どのような対応を検討されていますか? また、社内でマニュアルや研修の整備を行う予定はありますか?
符:
いくら資格があっても、在宅医療の現場経験が少ない医療者さんの対応の難しさは感じています。現場経験をどのように積んでもらった状態で参加してもらうか、もしくは社内でマニュアルや研修を提供するかは、今後考えていくべき課題だと思います。
これは医師に関しても同様ですが、医師がどの程度患者さんに向き合えるかは人それぞれ異なりますし、手技も経験の有無によっても変わってきます。

ひとつ言えるのは、この患者さんがどのような目的で在宅医療を受け、夜間に往診を依頼する時の状況や気持ちを想像し、理解できるようになるためには、日中の訪問診療の経験が重要だと考えています。
夜間対応の質は、日中の経験によって大きく差が生まれると思います。大きな病院での医師教育は、このような経験にはフォーカスしていません。病気を標準治療で治すか、標準的でない場合は論文を調べて対応する、といったエビデンスに主にフォーカスしているためです。
例えば、患者さんが「骨が折れたかもしれないが、できるだけ家で対応してもらいたい」と望んでいる場合、医療的には「骨折が疑われるので診断のために病院に行ってください」と答えるのが正しいです。
しかし、患者さんが求めているのは、「今の生活を維持する方法」、「できるだけ家で過ごすという手段」、「病院に行かずに自宅療養できるかの相談や、症状を軽減するためのアドバイス」です。
そのような希望に応えるためには患者さんの側に立つための事前の準備や対話の経験が必要だと感じています。
Q.医療の質に関して、『ON CALL』が目指す「質の高いサービス」とは具体的にどのようなものでしょうか?
符:
「質」を考えるとき、私たちは「医師の質」と「オペレーションの質」の両面から捉えることが重要と考えています。在宅患者さんにとって医療とは対面の体験であり、単に「症状に対応すること、治療すること」だけではなく、「安心を提供すること」が本質だと感じています。
例えば、「先生が来てくれたので安心した」という言葉は、「医師の質」を示すものだと思います。患者さんが不安な中で相談し、安心して「今後も過ごせる」と感じてもらえることが大切です。それがたとえ、治療が難しい状況や終末期であっても、患者さんが状況を理解し、心の準備ができることが在宅医療全体として提供すべき価値です。
そして、夜間や休日の対応を行う『ON CALL』では、特にこの「安心を届ける」ということを重要とし、医師がそれを実現するためのサポート体制を整えています。
また定量化が難しい領域ではありますが、オペレーションに関わる医師とディレクター(往診アシスタント)の相互評価をデータ化し、建設的なフィードバックができる仕組みを作っています。
「オペレーションの質」の面でも、迅速かつ適切な対応が求められます。ディレクター(往診アシスタント)の存在だけでなく、窓口には看護師のスタッフを配置し、自社システムを駆使して、早く適切な医療を届けることを実現しています。


対応スピードや到着までの時間、待っている時間や診療中にどんな声掛けができるのかその当たりをシステムで管理もしながら、仕組みや教育体制で構築をしています。
総じて、医師やオペレーターが患者さんの立場に立って話せる「人間力」が根底には必要かと思います。コミュニケーション能力とは少し異なり、純粋さや素直さを持って患者さんに寄り添うことが医療の質を高めるために重要だと感じます。そのような医療人を集めて切磋琢磨していきたいと考えています。
Q.質を向上するためのフィードバックではどのような工夫をされてますか?
符:
『ON CALL』では対応後のフィードバックを集め、その評価を質の向上に役立てています。最も大切にしているのは、患者さんが安心を感じられたかどうかです。これがサービスの本質的な価値であり、質の高い在宅医療の提供に向けた私たちの指標でもあります。
「人間力」が一つのキーワードで、独自の基準をもとにフィードバックや評価を行い、医師やスタッフの人間力を適切に評価しています。具体的な評価項目には、「処置の確実性」や「言葉遣い」、「身なり」、「質問に対する対応の姿勢」などが含まれ、約10項目にわたる基準をもとに点数をつけて評価しています。
フィードバックを行うことで、質の向上に役立てることができ、評価の過程そのものが非常に重要であると感じています。

まだ実現できていない部分もありますが、医師への評価や改善点の伝え方に関しても、表現のルール化やシステムを活用したAIを用いた自動補正機能などを取り入れ、「前向きな表現」の実現を目指しています。
また、訪問診療の経験の有無によっても大きな違いを生みます。在宅医療の現場で患者さんと直接向き合う経験は、医療従事者が業務を進める上での姿勢や理解に良い影響を与えます。
現在、社内オペレーションのスタッフにはアルバイトのメンバーが多くいますが、経験を重ねてフルコミットするメンバーが増えれば、チーム全体の質がさらに向上すると期待しています。経験の浅いメンバーにも、様々な顧客医療機関の現場を見学する機会を増やし、実際の現場での経験を積んでもらいたいですね。
顧客医療機関も、この取り組みを歓迎してくれています。私たちのチームの質の向上は医療機関にも大きなメリットをもたらしますし、医療機関の方々も「新たな仲間が学びに来てくれるのは良いことだ」と共感してくれています。
− ありがとうございました。